著者後記 : 2016年の春には『体系化学』の改訂版を出す予定で作業が進んでいます。その体系化学演習・第1回に、結晶格子の演習と解説を追加しました。今後は『医大受験』第一回と合わせて学んでいただけるようになりますが…。ところで、育文社によれば『医大受験』創刊号は「もう在庫はなく、出回っているだけ」とのことです。上のように書きはしましたが、入手できないとなれば、改訂版までのつなぎが必要でしょう。創刊号の該当部分だけpdfにて公開します。どうぞご参照ください。 (2015.2.23)
〔読者倶楽部会員「pentagon」さんより〕
こんばんは。
化学反応公式6について質問させてください。
体系化学の135番のような問題に出合ったのですが、分子量の条件から酸素原子の数を絞り込んだところ、酸素原子が三個以下までしか絞り込むことができませんでした。体系化学135番では酸素が一個だったので物質量がすぐに決まりましたが、この場合は3通り試す必要があるのでしょうか?それとも化学的に絞り込むことはできるのでしょうか?
問題の要旨は下記のようです。
「ある化合物を元素分析すると炭素68.9%水素4.9%酸素26.2%であった。この化合物は芳香族化合物で分子量は200以下である。また、塩化鉄(3)水溶液とは呈色反応をしなかった。この化合物の分子式を求めよ。」
〔2010年度GHS生 EZ君の答案と解説より〕
見づらいですが、 ●/○ を1つの分数として見てください。なお見やすくするため、あえて単位は省略しています。分子式をCxHyOzとおくと (x,y,z:自然数)
C: (100/M)×x =68.9/12
H: (100/M)×y =4.9/1
O:(100/M) ×z =26.2/16
〔基本通りに〕Oに着目すると、
Z =(26.2/16) ×(M/100)
= 1.6375 × (M/100) (注)100/1.6375≒61
≒ 1 ×(M/61) ≒ 2 ×(M/122) ≒ 3 ×(M/183)
Zは自然数なので、このように変形すると、分母の値が分子量Mの候補を表します。ここで、M≦200なので、M=61,122,183となります。それぞれZ=1,2,3であることが見えますね。
さらに、この化合物は芳香族なのでベンゼンのM=78を最低としてM≧78のはずなので、Z=1は明らかに不適です。次に、
一般に、Nを含まない有機化合物ではHの数は偶数であるので
Mは常に偶数となる
ということから、Z=3の場合、M=183奇数となるので不適。以上から、Z=2であり、この化合物はC7H6O2 M=122 不飽和度U=5であり、(異性体数え上げは略) この化合物は安息香酸。
著者後記 : 2011年の冬、季刊『医大進学』という受験雑誌が創刊となります。そこに化学の連載をもつことになりました。そのアドバンスレベルの第一回に、このテーマについてフルの解説と問題演習を書きました。ようやくにして、約束?を果たす格好になりました。A4、5ページで余す事なく説いてありますから、どうぞお楽しみに。 (2011.11.10)
( 読者倶楽部会員「まんさく」さん他 2009.10.11)
GHSで一年間授業を聞ける生徒はせいぜい20数名、でも全国には自分が求める指導者に恵まれず、また仮にGHSの存在を知り得ても、様々な事情で上京できない若者もいるのだ、とも。近年、全国各地からやってくる生徒の比重が大きくなっています。地方代表としての彼等の生の声、悲痛とさえ言える訴えに心突き動かされたというも事実です。私自身が過去にもった境遇として、それはわかりすぎるほどわかる。そういう若者の手に届くことが本望ですよ。(「成立経緯とGHS」p.13より引用)
著者後記 : 思考訓練の場シリーズの伝統からすると、育文社が出すまでは、英語も国語も市販されず、会員のみが購入可能であったという事実がある。ならば、その歴史を継承し「会員限定頒布」なら可能だろうか・・・等々考えたりする。GHSテキストとおなじ簡易製本になるが、それなら手間自体はあまりかからないし・・・。けっして別に出し惜しみしているのではなく、物理的に・時間的にムリなのだ・・・だが、もっと学びたい真摯な読者受験生がいるなら・・・という彷徨があることだけは記しておきたい。2009.12 記
著者後記 : 確かに、圧力単位をPaにしたことは、前課程からの大きな変更点の一つである。これも、No.7と同じく、単位を最先端的表現に合わせようとしているわけである。ならば、「体積もリットル(l )ではなく,立方メートルにしたらよかろう」と注文をつけておいたが、要はその目的であり、筋の通し方である。周期表にしても、圧力単位にしても、教育的な段階的理解という観点を把持していれば、このような中途半端はないであろうが、少なくとも『体系化学』では、何がトレンディーがではなく、どう学ぶべきかが常に問題意識にあるので、このような見解となるのである。2009.12 記
著者後記 : *これは、この質問をうけて、その後、別ページダウンロードできるようにしました。質問をしてもらうことは、このように発展の契機となり、ありがたいものです。今回のリニューアルにあたり、ここにリンクします。必要な方はここからダウンロードしてください。
また、読者倶楽部内の掲示板には、第二版の補足点へのコメントを記しておきましたので、会員の方は参照して、質問・意見があれば書込をしてください。2009.12 記
著者後記 : ネット上であれば、フルカラーのpdf形式で配布できる時代になったので、来年度に向けて、周期表と解説のダウンとロードを企画している。すでに、昨年度講義してデータ化も済んでいるが、それをHPに載せるのはまた別の手間で・・・。なるべく急ぐつもりではあるが、ゆるやかに待っていて欲しい。2009.12 記
著者後記 : 脳の「働き」としてではなく「実質として」体系的に働く、という箇所は理解するのが難しいと思う。だが、そういう体験をしてみれば、「ああ、こういうことか」と納得できる。それが知識を得るということと、理解するということの違いなのだが、これもコトバではなく、事実として分からねば意味がない。2009.12 記
・・・「引き上げてもらう」ではなく「自らが上昇していく感覚」を味わってもらいたい。『思考訓練の場としての体系化学』も当然に同じ志向です。
ただ、より正確に言うと「体系」ですから文字通り‘自分でよじ登っていく’ことが必須なのです。実物を知らない内はこの意味がわからない人が大半とは思いますが、簡単にいえば、論理の立体的な‘峰を登り切って’はじめて、「体系」ということが分かってくるものだからです。
しかし同時に「体系」ですから最初から急斜面はありません。見かけからすると字も大きいし、文体も前作のように硬派ではないので、登り始めて暫くしてから後戻りできない険しさを感じるかな。(「成立経緯とGHS」p.5より引用)
著者後記 : 二点ばかり追記したい。読者倶楽部でも一部披露しているが、一通りの学びが済んだGHS生に、〝修了検定〟として「100選」の問題をセレクトして解かせてみる。もちろん、答案は体系化学的になるが、特に難問という意識もなく、8割の生徒が解ききるものである。毎年検証を続けている次第である。
また、「本テキストは東大生御用達でない」と書いたものの、東大受験生・合格者から「役に立った」との感想が度々来る。今年理3に入ったK君も、易しいからといってバカにせず謙虚に地道に取り組んでいた。ホントウに優秀な東大生とは(私を含めて?)価値を認めるものに対してはとても謙虚であるなあと思い起こしたものである。2009.12 記
収録にあたって一部改変
著者後記 : どこかで何度か述べたように、本テキストの「まえがき」は、他の類書や教科書とはちがって「飾り」ではありません。本テキストの学びのスタートにおいてとても重要なことを述べているので、読者諸君は繰り返し味読するように改めて注意しておきます。
まずは、対象となる読者像について明確に規定していますので、上のファイルでは、その部分を今回改めて編集し強調しておきました。その他には、本テキストでいう「体系」とは何かが、エッセンス的に規定してあります。その具体化が本書の中身です。このような構成の書物は希少ですから、読み方自体をも学ばねばならないのです。
ですから、その体系の尖端である「まえがき」を軽く読み流すなどしては、もう最初から体系的な思考訓練につまずいていることになります。ご用心! 2009.12 記
著者後記 : すでに第二版となり、こんな的外れな質問も、少なくとも読者からは来なくなりましたが,権威ある教科書の分類は相変わらずですし、その指導要領に準拠する学参の方が圧倒的に多いだけに、「理論」「無機」「有機」という分類に何の疑問も抱かない(べつにそれでもいいんですが)受験生が再生産されつづけていることは2009年現在もたしかでしょう。上の目次をしっかりとながめてもらえばわかるように、高校化学全体が、ただ一つの筋で貫かれています。そのなかに、いわゆる「無機」の定性的知識の基礎になるものが適宜説かれています。GHSで、いわゆる「無機」の問題を演習する段になって、「なるほど「無機」というのはないんだな、単なる個別的かつ総合分野なのだなー」とようやくにわかるものです。2009.12 記
著者後記 : たしかに、『思考訓練の場としての英文解釈(1)』の「第13刷(増刷)に寄せて」には、平成四年の時点で「第3集を執筆中」とありますから,待ち続けている方も少なくないのでしょう。育文社の山田社長からは、多田先生の話を漏れ承ることもありはしますが、その後どうなんでしょう、そういう情報はさすがに伝わってきませんね。あしからず。2009.12 記