『思考訓練化学』一般的な質問と答え

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No.13 タイトル:体系化学演習 問題69について

  • 69番の問題を読んで、「あれ?そもそも最初にいれたNaOHの量は完全にアンモニアを発生させるのに充分かどうかどう判断するんだろう?」と疑問に思いました。
  •  前書きのところで書かれていた双方向コミュニケーションを利用しようと思い立ち質問しました。
  • 〔読者倶楽部会員「zhont」さんより〕

■Answer  心配無用、それが化学実験というものです

69. 濃度不明の硫酸アンモニウム水溶液の濃度を次のような方法で求めた。まずこの水溶液20.0mLに1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLを加えて加熱し、発生したアンモニアを0.50mol/Lの硫酸20.0mLに完全に吸収させた。続いて残った硫酸を、0.50mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定したところ10.0mLを要した。

 問題69は上の通りです。zhont3の疑問は、下線部の「強塩基による弱塩基」の‘追い出し反応’において、アンモニアすべてを追い出すのに水酸化ナトリウムがこれで十分なのか、もし、不足だったらどうするのか、そういう吟味はいらないのか、という点です。

 実際問題としてはともかく、とりあえず入試問題として出ている以上は、そういう点はクリアされているとみるべきです。「硫酸アンモニウムの濃度を求めよ」いうのですから、すべてのアンモニアを追い出さないと意味がありません。もし、水酸化ナトリウムが不足していてアンモニアが残った、そして誤差がでた、ということがあれば、それは化学実験・測定として不備なのであり、「逆滴定実験」として失敗です。指導者に怒られてやりなおしです。
 設問で「不足による誤差」などを問うたりしていない以上、実験としては成立したとみてよいのです。つまり、すべての気体が追い出されているというのは「化学実験として当たり前のこと」という判断をすればよいのです。したがって問題として解くときにそれを下調べする必要はありませんし、それを吟味しているヒマも入試の場ではありません。
 もちろん、こういう過不足をテーマに問題を作ることは可能ですが、入試の標準問題演習の学びの最中にそういう枝葉的思考を訓練するのは不適です。まずはまともな実験での正確な立式をしっかり身につけることに専心すべきです。それができたあとに、そういう「難問」があれば取り組んで、やっつけちゃってください。

No.12 タイトル:結晶格子の問題について

  • ・・・所謂「理論化学」から逃げていて(それだけが敗因ではないですが)ことごとく入試に落ちてしまいました。そこで今年こそは逃げずに基礎の基礎からしっかり学ぼうと決心し『体系化学』の本を手に取り、おかげで徐々にではありますが問題が解けるようになってき、夏の実戦模試では6割取ることができました。・・・僕は結晶格子の分野が苦手で、ここも体系化学で学ぶことはできないのでしょうか?〔読者倶楽部会員「ぐりしん」さんより〕

■Answer  すでに手配済みです!(登録時返信メールを補足)

 こんにちは。著者の天野光信です。「ぐりしん」さんは京大志望なんですね。なので、苦手といいながらそれ相当には勉強をされてきたはずですが、にもかかわらず、基礎の基礎から学び直そう、という姿勢はすばらしいです。
 ちなみに、昨今のテニスの錦織選手の躍進の原動力として、マイケル・チャンコーチ存在が上げられていますね。メンタル面なことばかりしかマスコミでは報道されませんが、「基礎練習」がキライな錦織選手に、コーチは、初心者がやるような基本練習を繰り返し繰り返しやらせた、といいます。実力がある程度ある人が、基本に立ち返って地道な練習をはじめるということはとても良いことですからGHS生にも夙に説いていることです。

 しかも、そこで『体系化学』を手に取るとはさらに素晴らしい(^_^;) 「基礎から・・・」と題する参考書はありますが、開いてみれば分かるように、教科書の始めから繰り返すものばかりで、「基礎とは何か」を吟味し、突き詰め、把握することなしでは、ぐりしんさんのような人の要望は満たされないでしょう。
 基礎とは何かをまともにふまえれば、指導要領にしたがうのはオカシイとわかはずで、『体系化学』のような構成にならざるを得ないのです。それに気付いた直感力はさすがです。
 さて、「結晶格子」については、『体系化学』をもっと読み込まれるとわかってくるはずですが、化学的には易しすぎる計算問題にすぎないために、あえて説いていないことをわかってほしいと思います。GHSでは「セメント&ドリル」においてやらせてみますが、何も教えずとも、化学基礎公式1の拡張式と基礎公式2でさらっと解いてしまいます。化学の部分は大したことはないのです。
 なお「結晶格子」の標準的学びに関しては、すでに、4年前の『医大受験』vol.1(創刊号)の連載稿において説いておきました。ご参照ください。

著者後記 : 2016年の春には『体系化学』の改訂版を出す予定で作業が進んでいます。その体系化学演習・第1回に、結晶格子の演習と解説を追加しました。今後は『医大受験』第一回と合わせて学んでいただけるようになりますが…。ところで、育文社によれば『医大受験』創刊号は「もう在庫はなく、出回っているだけ」とのことです。上のように書きはしましたが、入手できないとなれば、改訂版までのつなぎが必要でしょう。創刊号の該当部分だけpdfにて公開します。どうぞご参照ください。 (2015.2.23)

『医大受験』vol.1化学「結晶格子」.pdf

No.11 タイトル:化学反応公式6の「応用」について
・「分子量が与えられていない場合はどう解くのですか?」
・「『体系化学』には分子量が曖昧なときの解き方がありますが、範囲が広くて絞りきれない場合ははどうするのですか?」

読者倶楽部会員「pentagon」さんより
こんばんは。
化学反応公式6について質問させてください。
体系化学の135番のような問題に出合ったのですが、分子量の条件から酸素原子の数を絞り込んだところ、酸素原子が三個以下までしか絞り込むことができませんでした。体系化学135番では酸素が一個だったので物質量がすぐに決まりましたが、この場合は3通り試す必要があるのでしょうか?それとも化学的に絞り込むことはできるのでしょうか?
問題の要旨は下記のようです。
「ある化合物を元素分析すると炭素68.9%水素4.9%酸素26.2%であった。この化合物は芳香族化合物で分子量は200以下である。また、塩化鉄(3)水溶液とは呈色反応をしなかった。この化合物の分子式を求めよ。」

■Answer  読者倶楽部掲示板より引用・抄

 pentagonさんよくぞ質問してくれました。よい質問です。テキストをしっかり学び、その先へと突き進んでいくと、反応公式6ではこの種の問題に出合うものです。
 これは、すでに2006年に筑波大医学部にすすんだ村松君(GHS HP 合格体験記 参照)が受験生当時に提出した質問を契機としてその種の問題をコレクトしはじめたことにはじまり、2009年度からはGHSの「総合化学演習」という授業であつかっているテーマの1つです。
 今年も『体系化学』が一応終了したGHS生を対象に、二学期から総合化学演習」を開講していますが、「テーマ1」が、「化学反応公式6の完全制覇」です。この種の、分子量が与えられていないもの、または、分子量の範囲が大雑把なものを10問ほど演習しました。もちろん、同じように解けない問題なんてありません。GHS生にやってもらいましたので、答案例を紹介します。

〔2010年度GHS生 EZ君の答案と解説より〕
見づらいですが、 ●/○ を1つの分数として見てください。なお見やすくするため、あえて単位は省略しています。分子式をCxHyOzとおくと (x,y,z:自然数)
  C: (100/M)×x =68.9/12   
  H: (100/M)×y =4.9/1 
  O:(100/M) ×z =26.2/16
〔基本通りに〕Oに着目すると、
  Z =(26.2/16) ×(M/100)
   = 1.6375 × (M/100)  (注)100/1.6375≒61
   ≒ 1 ×(M/61) ≒ 2 ×(M/122) ≒ 3 ×(M/183)

Zは自然数なので、このように変形すると、分母の値が分子量Mの候補を表します。ここで、M≦200なので、M=61,122,183となります。それぞれZ=1,2,3であることが見えますね。
さらに、この化合物は芳香族なのでベンゼンのM=78を最低としてM≧78のはずなので、Z=1は明らかに不適です。次に、
 一般に、Nを含まない有機化合物ではHの数は偶数であるので
         Mは常に偶数となる
ということから、Z=3の場合、M=183奇数となるので不適。以上から、Z=2であり、この化合物はC7H6O2  M=122 不飽和度U=5であり、(異性体数え上げは略) この化合物は安息香酸。

 この「反応公式6の完全制覇」は、暇をみつけてHP「体系化学のその先へ」シリーズとしてアップするか(でも、いつになるとは約束できません...)、暇がなければ、小冊子にして会員限定で頒布するか(なにか、「思考訓練シリーズ」の伝統のニオイがしますね......)。いずれにしても、私が何かを与えるのをただ待つのではなく、会員諸君が先頭になって、主体的にこのように道を切り拓いていってくれれば、その日も近づくことでしょう。『体系化学』もそうやってできてきたのですから。

著者後記 : 2011年の冬、季刊『医大進学』という受験雑誌が創刊となります。そこに化学の連載をもつことになりました。そのアドバンスレベルの第一回に、このテーマについてフルの解説と問題演習を書きました。ようやくにして、約束?を果たす格好になりました。A4、5ページで余す事なく説いてありますから、どうぞお楽しみに。 (2011.11.10)

No.10 タイトル:演習書/セメント&ドリルについて
・「演習書を出していただきたいのですが」
・「ブログに書いてある、体系化学演習の類題集「セメント&ドリル」を出版する予定はありますか?」
・「体系化学を繰り返しやってから、他の問題集にチャレンジしていますが、できれば体系化学的な解答解説がついている難関校問題集がほしいのですが・・・」

( 読者倶楽部会員「まんさく」さん他 2009.10.11)

■Answer

 今のところ次の出版予定はありません。HP内「思練化学の成立経緯」の中でも語っていますし、ブログでも言及しているように、「思考訓練の場としての体系化学」の出版の最も重要な意図は、GHSから全国の受験生に向けての「こういう学び方=体系的な学び方もあるのだ」という発信であり、それに共鳴しうるアンテナを備えた若き人材の手に届くことでした。HPや雑誌広告だけではない‘出合い’の場の一つとすることです。

 GHSで一年間授業を聞ける生徒はせいぜい20数名、でも全国には自分が求める指導者に恵まれず、また仮にGHSの存在を知り得ても、様々な事情で上京できない若者もいるのだ、とも。近年、全国各地からやってくる生徒の比重が大きくなっています。地方代表としての彼等の生の声、悲痛とさえ言える訴えに心突き動かされたというも事実です。私自身が過去にもった境遇として、それはわかりすぎるほどわかる。そういう若者の手に届くことが本望ですよ。(「成立経緯とGHS」p.13より引用)

 そしてまた、GHSの入会案内パンフや資料では伝えがたい中身を、具体的に伝えることです。特に「体系的」ということはコトバでは色々な人が各々の意味で使っているものなので、具体物で示さないとこちらの意図する「体系的」が伝わらないからです。

 そして、もしこれをしっかりと見て、学んで、GHSの門を叩くのならばこんなに嬉しいことはないし、互いに幸運な出合いと言えるでしょう。
 幸いに『体系化学』は今年度も、GHSにおいてこの重大な役目をしっかりと果たしてくれていますので、この目的でこれ以上の出版は現在考えていませんし、そんな労力を割く余裕は現在の著者にはありません。現在の授業を遂行することで手一杯です。
 これは「成立経緯とGHS」にも書いてあることですが、出版することによって利益を出すという商業的意図がないのですから、大手出版社や予備校系出版社がやるように参考書を出したらセットで問題集を色々・次々に出して儲ける・・・というイメージでは捉えないようにしてほしいと願います。
 ただし、授業での解答・解説はすべてデータ化してありますし、内部テキスト・冊子の形になっていて毎年改訂を積み重ねています。その一部は本HP内の「読者倶楽部」の中では随時、適宜、公開しているところです。
 また、高校・塾等教育関係者の方で、授業に使いたいということであれば、GHSとしても力をお貸しする心積もりはあります。大切なのは「共鳴」という一点でしょう。GHSの方へご相談ください。

著者後記 : 思考訓練の場シリーズの伝統からすると、育文社が出すまでは、英語も国語も市販されず、会員のみが購入可能であったという事実がある。ならば、その歴史を継承し「会員限定頒布」なら可能だろうか・・・等々考えたりする。GHSテキストとおなじ簡易製本になるが、それなら手間自体はあまりかからないし・・・。けっして別に出し惜しみしているのではなく、物理的に・時間的にムリなのだ・・・だが、もっと学びたい真摯な読者受験生がいるなら・・・という彷徨があることだけは記しておきたい。2009.12 記

No.9 タイトル:旧課程の問題について
「傾向対策のために志望校の過去問を解くのは当然ですが、2006年以前の旧課程、旧々課程の問題は少なからず単位等の変更が見られます。体系化学にあるように単位変換をすればよいのですが、どこが今と違いどこをどう直せばよいのかなどをサイトに掲載していただければかなり効率が増すと思います。
 個人で直しても良いのですがすべてを正確に治せるか不安が少なからずあります。どの年代にどこが変更されどう直せばよいのかというまとめ等を、私が言うのはずうずうしいかもしれませんがお願いできませんでしょうか?」( 読者倶楽部会員:「ヒロシ」さんより 2009.5.26)

■Answer

 そうですね〜。君の言う通り、本来的には私がやるべき仕事じゃあありませんね〜、これは。
数年前、「圧力単位統一」の大義名分の下に、学会の意向をそのまま下ろして、1atmという化学計算上大変に優れた単位を放棄してPaに変え,1.013とか8.31などという計算の桁数を増やすだけの単位に切り替えるのを承認したのですから、そのフォローの一切は文科省がその教育的責任とやらでやるべきことでしょう。
 理科教育的には医療的にも実用性がある760mmHgも含めて、上手く使い分ける教育をしたらいいだけだと思います。かつては、mmHg表示をatmにして計算するようになっていたくらいですから、それが1つ増えてもやることは変わりありません。しかし、そのメインが物理的なPaというのはよろしくないな・・・・・・と思ってはいます。
 なぜなら、1Paという圧力には現実的意味がないからです。Pa単位とはいってもご存知のように、あくまで1.031の10の5乗倍=1atmが基準です。

 だから、要するに今まで通りでよく、“地球人”の受験生なら地表面の大気圧である1atmを基準として。『体系化学』に説くように「R=0.082に実感をもちつつ計算」してその結果を出してから、必要ならばPaに転換するという手順が適切だと思ってますし、計算のプロセスにはなるべく使わないようにとGHSでは指導しています。

 むしろ、旧課程の入試問題ならば、最初からatm単位表示してあるのですから、そのまま体系化学的に計算すればよく最後にPaに直せばよいのです。atmで表示してあるものをわざわざ桁数の多い半端な数値のPaにしてから化学計算をするのは遠回り・ムダというものです。
 したがって、逆から言えば、現課程の問題をこそPaをまずatmに換算してから計算をすべきであり、そのお手本が「旧課程」の問題という風に私には映っています。
 大まかには以上ですが、読者倶楽部での掲示版に、化学の単位についてのテーマを立ち上げましたから、細かい点や疑問点は、そちらに書き込んでください。

著者後記 : 確かに、圧力単位をPaにしたことは、前課程からの大きな変更点の一つである。これも、No.7と同じく、単位を最先端的表現に合わせようとしているわけである。ならば、「体積もリットル(l )ではなく,立方メートルにしたらよかろう」と注文をつけておいたが、要はその目的であり、筋の通し方である。周期表にしても、圧力単位にしても、教育的な段階的理解という観点を把持していれば、このような中途半端はないであろうが、少なくとも『体系化学』では、何がトレンディーがではなく、どう学ぶべきかが常に問題意識にあるので、このような見解となるのである。2009.12 記

No.8「こんにちは。思考訓練の場としての体系化学について初版を持っているのですが、増補・増刷版とは詳しくはどこが違うのでしょうか? 初版を使うことでのデメリットは生じるでしょうか?よろしくお願いいたします。」( 読者倶楽部会員:「ヒロシ」さんより 2009.3.19)

■Answer

デメリットはまったくありません。『体系化学』は、その体系性においては完成していますから、たとえ今後どんな改訂や増補があったとしても、この論理的骨格が変更を受けることはありません。したがって、初版の読者の方は、そのまま引き続き学びを進めていただいて結構です。
 「増補」とか「改訂」とか銘打って読者心理を揺さぶりもう一冊買わせよう、なんていうコンタンはありませんので、ご心配なく。実際のところ、第二版は、問題の差し替えや解答・解説の大幅な変更などは一切ありません。誤植の訂正に加えて、用語の統一や、一部記述の補足です。
 むしろ、初版の読者受験生には、どこが違うのか探すのが(良くある間違い探しの二枚の絵のように)大変かもしれませんね。それでも、気にはなるでしょうし、初版から付き合ってくれている読者は、私としてもいつまでも大切にしたいので、いずれ近いうちにヒマをみつけて、第2版で増補した部分を一覧にした「*初版アップデーター」のページを作るつもりです。

 再度、念のために言っておきますが、本テキストをマジメに学んでこられた読者・受験生ならば、『体系化学』の論理構成は、変更の余地もその必要もないことがわかってくるばずです。そういう意味で、デメリットなどありえない!という確信をもてるほどに自己化してもらいたいと願います。

 もちろん、いずれはいわゆる「難問」をとりあげて体系化学的に解いてみせるとか、有機化学の計算問題へと応用の触手を伸ばすことはありうるでしょうが(GHSの授業ではすでにその方向に進んでいます)、そのときも、理論的な核(=コア)としてまったく不動であり、その幹や枝がより成長していくことになるだけであることは賢明な読者諸君には明らかでしょう。それが「体系的」ということにほかなりません。

著者後記 : *これは、この質問をうけて、その後、別ページダウンロードできるようにしました。質問をしてもらうことは、このように発展の契機となり、ありがたいものです。今回のリニューアルにあたり、ここにリンクします。必要な方はここからダウンロードしてください。
 また、読者倶楽部内の掲示板には、第二版の補足点へのコメントを記しておきましたので、会員の方は参照して、質問・意見があれば書込をしてください。2009.12 記

初版→第二版updaterLinkIcon

No.7「HPの進度目標にしたがって、現在セカンドステージの演習に入って一応順調に進んでいます。本日は、テキストについてお聞きしたいことがあります。p.97の強酸と弱酸のところで、「硝酸が5族、硫酸が6族、塩酸が7族元素の強酸の代表である」とあります。これは15,16,17族と思うのですが、どうしてですか?それとも誤植なのでしょうか?」 (2008.6.18)

■Answer

 なるほど、今の受験生がそう思うのもムリないですね。そう言われれば、たしかに、ここで一言 (注) をいれた方がよかったかなと思います。もちろん、ここは誤植などではありません。その証拠に、もっと先に進んで、酸化還元のところでも、たとえばp.129 図9や、p.133 図10などをみてもらうと、やはり同じように5,6,7族などとと書いてあるのがわかるでしょう。本テキストでは、原子番号は一桁の族番号で統一されているのです。 
 すなわち、本テキストでの族表示は、現在の周期表の1〜18までの族分類にしたがっていません。(そもそも文科省の指導要領にしたがってないのですから、まあ、これもその一つです)
 実は、一昔前まで長い間使用されていた周期表では、1a族や5b族というようにヨコ18コをa,bに分けて、族番号が10を越さない形になっていたのです。ちなみに、手元にある平成4年版の中学理科の教科書ではまだ前バージョンの周期表が掲載されています。
 この旧表示周期表の優れたところは高校レベルの化学反応に頻繁に登場する元素の最外殻電子数と族番号とが一致する点であり、族番号を覚えることは、化学反応を理解するためのキーナンバーとして機能していたのです。
 それが、いつの間にか(少なくとも私にとっては・・・)これが通し番号になり15とか17とかいう、形式的な族番号がはびこってしまいました。GHSでは、もう何年も前から「こんな族番号は高校生の役には立たない!!」と言って、前バージョンの周期表をプリントして渡しています。現在のこの「18列通し番号周期表」は、化学者達がいろいろな議論の結果取り決めた現時点でのスタンダードなのですが、それをそのまま下ろし化学的な「真理」として高校生の教育に使うのは、教育のメソッドとしてはそれこそ無思想に近いと私は思っています。

(前バージョン周期表がネット上にありましたのでこちらにリンクしておきました)click hereLinkIcon

 そんなに最先端が好きなら、たとえば物理では、微分積分をしっかり使って運動方程式を積分して運動量保存則や力学的エネルギー保存則を導いてその体系的なつながりをしっかりと教えるような指導要領にすべきでしょう。しかし、高校生のために・・・・・・?数学的に薄めて幾何学的説明でお茶を濁して教えるようになっています。実にレトロな代物であり、奇妙なネジレ現象です。
 現在の周期表について言えば、「どうしてヨコは18列なのか」その根拠をしっかりと教えないといけないはずです。というのは、昔から、色々なタイプの周期表が考案されていて、ヨコが18でないものも種々あるのです。
 端的にいえば、現在主流の周期表は3周期目のs+p+d軌道に合わせてあるにすぎない(実際は4周期目に反映される)のです。ただタテヨコ比的には均整がとれていて、見開き2ページに収まるデザインになるという利点があります。しかし、3周期目に合わせたしわ寄せで、3周期目までは大きな‘谷’ができてしまい、6周期目からは、ランタノイドやアクチノイドが収まりきれず、はみ出してしまっています。だから、こんな変な形をしているのです。
 つまり、少なくとも私の目にはいびつな周期表にしか見えません。そういう人も他にいるのでしょう。ちなみに、48拡張周期表といってタンタノイド達がはみ出さないような周期表も提案されています。ずいぶん横長になり、タテヨコ比が美しくないのですが・・・。しかし、その分、中央部分は谷ではなく、河岸段丘のようになっています。
 こんなモロモロの事情を抱えた周期表ですので、せめて今の18周期表については、族番号くらいは高校生の学習に役に立つ形にしたいのです。
 初版では、化学の参考書に定番のはずの!周期表を掲載していませんが、この辺りの事情もあって、適切なものを用意するのが間に合わなかったのです。いずれ、フルカラーで改訂版を出す機会などが幸運にも巡ってきたら、周期表についても、ちょっとしたこだわりを示したいと考えています。それまでは、上のリンクなどを参照にしてください。

著者後記 : ネット上であれば、フルカラーのpdf形式で配布できる時代になったので、来年度に向けて、周期表と解説のダウンとロードを企画している。すでに、昨年度講義してデータ化も済んでいるが、それをHPに載せるのはまた別の手間で・・・。なるべく急ぐつもりではあるが、ゆるやかに待っていて欲しい。2009.12 記

No.6「私立医学部を目指す宅浪生です。まだ最初の方の第4回くらいですが、解説が親切・丁寧でとてもわかりやすくて気に入っています。私のような独習者にはピッタリです。そこで教えていただきたいのですが、丸ごと一冊おえるにはどのくらいの期間がかかるものでしょうか? というか、どのくらいくらいの期間で終わらすのが適当なのでしょうか? また、演習を進めていくにあたってなにか注意すべきことはありますか?」(2008.4.25)

■Answer

「一冊全部を、演習を含めてやり切る期間はどのくらいが適切か?」 という意味に解して答えましょう。というのは、演習を除いてまずは全体を「読み切る」ということであれば、これはなるべく1-2週間ほどで短期間に読み切る方がよいからです。まずは、大まかながらも全体像を描くために必要な作業です。たとえていえば、初めての観光地をガイドさんに連れられて一通り見て歩く、そういう体験です。(同じようなたとえ話はテキストにも書いてある)
 そのなかで、いくつか共感し、なにかを 感じとり、もっと深く学びたいな……そういう印象が得られれば、とっかかりができます。ただし、これは必要であっても、十分とはいえません。
 二度目に同じ土地を訪れるときは、自分の興味や関心にしたがって、じっくりと腰を据えて観察するものでしょう。本テキストも、順を追って、段階的に、「ストーリー」が展開するようにできています。それを感じながら、じっくりと演習問題を一つ一つこなし、解答解説を読み……という形で進んでいってほしいと思います。

 期間の目安をお答えしましょう。GHSでは例年、週1回150分という授業ペースで進んで積み上げていき、1st Stage+[補]は大体、二ヶ月・8回で修了し、そこで第1回の実力確認テストをします。
 それをふまえて、夏期講習期間も同じ週一ペースで休みなく進むので、ほぼ10月いっぱいで一応の終講を迎えます。約6ヶ月です。しかし、ここから、受験までに3-4ヶ月ありますから、追い込みには十分な時間が残されています。というのは、《化学計算原理》と諸公式を一通り身につけてからの問題演習のスピードは、それまでとみちがえるほど速くなりますから、試験までの実力の急勾配の高まりがとても楽しみなものです。

 受験生として、焦る気持ち、一刻も早く仕上げたい、と言う気持ちはよくわかりますが、なにごとかを 本気で「身につける」ということは、生身の人間である以上、促成栽培は効きません。すくなくとも、脳細胞が単に「働き」としてではなく、実質として「体系的思考」に馴染むのに、どんなに早くとも3-4ヶ月はかかるものです。それが人間の脳というものであり、大脳生理学的な見解です。
 したがって、独習する場合も、急いだとしても週に演習2回分のペースで、せめて3ヶ月くらいかけて、熟成させつつ進んでいくような計画を立ててください。

 最後に、演習をやる際の注意点についてですが、テキストp.24および、解答・解説読本p.4に書いたこと以外で、「念のため」重要なことを一つ述べておきます。
 それは、「答え合わせ」の「答え」の中身です。私の授業を受けている諸君には自明のことなのですが、あわせるべき「答え」とは、「化学計算式」そのものであり、いわゆる「答え」の数値のことではありません。

 化学計算式を立てるところまでが、「化学」の訓練なのであり、そこから答えの数値を出すのは、単なる算数・数学の計算練習にすぎません。だから、化学計算式がキチンとできていれば、OK!!として、○をつけ、次々にやっていけばよいのです。
 特にその「答え」がつぎの設問につながるとか、分子量として数値を出した方がいい、などと判断される場合以外は、いちいち算数計算はしなくてよいのです。否、時間の無駄です。
 化学と算数とを区別するためにも、そんな算数計算はやってはいけない、といっておきましょう。しかし、「数値」が答えだとしか教え込まれていない人が多いものです。また、数値まで計算しないとなんだか気が済まない、という人もいるようです。本末転倒、実に困ったものです。「化学」そのものの勉強にこそ時間とエネルギーを効率よく注ぎ込むこと!! これが、「念のため」の注意点です。

著者後記 : 脳の「働き」としてではなく「実質として」体系的に働く、という箇所は理解するのが難しいと思う。だが、そういう体験をしてみれば、「ああ、こういうことか」と納得できる。それが知識を得るということと、理解するということの違いなのだが、これもコトバではなく、事実として分からねば意味がない。2009.12 記

No.5「来年度の受験生です。数日前書店でみて購入しました。まだ最初の方しかやってないのですが、演習問題がとても簡単なような気がします。思考訓練シリーズの新刊なので超難問揃い(理系化学100選のような)かと思ったので意外です。これで思考訓練になるのですか?」(2008.3.25)

■Answer

 1-2ヶ月じっくりと本テキストに取り組んでから、はたして同じ質問ができるかどうか自らに問うことです。最初の方を少しかじっただけで、自分の体系的でない論理的に未熟な頭が判断することを信じないことが肝要です。 
 10年余にわたる経験からすると、GHSから当初の希望以上の合格を果たすような、どんなに筋のいい生徒でも、この問題配列の意図と体系的思考との意味とを理解できるには、最低でも2ヶ月はかかるものです。まして・・・、立ち読み程度はいわずもがな、1st Stageだけでもまだまだ・・・というのが相場です。

 本テキストは、「まえがき」にも明記したように、化学再入門のためのテキストです。「再入門」ということは、‘すべてを一からやり直す’と言うことです。それを面倒くさがったりがったり、「この程度はできるから・・・」とバスしたりすれば、その時点で「体系的思考」への門戸は永遠に閉ざされるでしょう。テキストの指示通りに一歩ずつ着実に登るしかありません。

・・・「引き上げてもらう」ではなく「自らが上昇していく感覚」を味わってもらいたい。『思考訓練の場としての体系化学』も当然に同じ志向です。
 ただ、より正確に言うと「体系」ですから文字通り‘自分でよじ登っていく’ことが必須なのです。実物を知らない内はこの意味がわからない人が大半とは思いますが、簡単にいえば、論理の立体的な‘峰を登り切って’はじめて、「体系」ということが分かってくるものだからです。
 しかし同時に「体系」ですから最初から急斜面はありません。見かけからすると字も大きいし、文体も前作のように硬派ではないので、登り始めて暫くしてから後戻りできない険しさを感じるかな。(「成立経緯とGHS」p.5より引用)

 また、「思考訓練英語」を知っている人は、そのイメージから本テキストを東大生御用達の「超難問集」という先入観でみるのでしょう。(たとえば物理でいえば「難系」のような位置づけか。)

しかし、それならばあなたがあげている「100選」など、難問集はいくつかすでにあるのだから、私が今さら同系列のものを、二番・三番煎じにもかかわらず、「思考訓練の場」の名の下に出す必然性はありません。そんな行為は、そもそも「思考訓練の場」という名前に対しても不遜かつ失礼でありましょう。それまでに無いものだからこそ、先入観なしに虚心に取り組んでもらいたいと思います。
 「まえがき」を読めばわかるように、「100選」レベルが自習できるような大秀才には、本書は全くの無縁です。強い者(=偏差値秀才)が、さらに最強を目指すための参考書ではないのです。むしろ、「100選」レベルはまったく歯が立たず、その解説を読んでもさっぱり分からず、これをやり通したという有名進学校生が‘神様’に見えるような、ごく普通の受験生のために書かれたものです。
 そんな普通の受験生でも、本テキストをしっかり学んだならば、「100選」は自力でできるようになり、いわゆる偏差値秀才より頭が良くなるのです。それが「再入門テキスト」という意味なのです。

 自分がかつてそうだったから言えることですが、「難問」を前にウンウン唸って、分からなくてもあきらめず一生懸命繰り返して、その結果「解答」をそっくり覚えること(=これが偏差値秀才のふつうの勉強の仕方であり、そのごく一部の恵まれた者が“理解”に達する) を「思考訓練」と思っているものです。なぜなら、それ以外に「学ぶ方法」を教わっていないからです。もちろん、それは当人のせいではなく、これまでの教育の欠陥ですが、「まったく新たな学び方」によって、その頭の働きを良くするのが本テキストの効能です。
 とにかく「自分は能力は普通である」と自覚して読者になったのなら、地道に、愚鈍に、脇目もふらずただひたすら登りつづけ、とにかく一度「体系の頂き」まで登り切ることです。

著者後記 : 二点ばかり追記したい。読者倶楽部でも一部披露しているが、一通りの学びが済んだGHS生に、〝修了検定〟として「100選」の問題をセレクトして解かせてみる。もちろん、答案は体系化学的になるが、特に難問という意識もなく、8割の生徒が解ききるものである。毎年検証を続けている次第である。
 また、「本テキストは東大生御用達でない」と書いたものの、東大受験生・合格者から「役に立った」との感想が度々来る。今年理3に入ったK君も、易しいからといってバカにせず謙虚に地道に取り組んでいた。ホントウに優秀な東大生とは(私を含めて?)価値を認めるものに対してはとても謙虚であるなあと思い起こしたものである。2009.12 記

No.4 「今度高2になります。一応進学校なのでそろそろ受験準備をしようかなと思って書店に行ったらタイトルに引かれて手に取りました。わかりやすそうに書いてある感じですが、まだ習ってないところもあり、購入をとまどっています。今から始めて大丈夫でしょうか?まだ早いでしょうか?」(2008.2.23)

■Answer

 本書の元々の想定読者からすると、たしかに少し早いとは思われます。現行指導要領では、質問No.3でもふれたように、定量化学の多くが「化学にII」に追いやられてしまっている(「ゆとり」とセンター試験の都合でしょう)ので、化学IIの履修がある程度進んで、そして多少‘行き詰まって’壁に当たってから! やり始めるのが適当かと考えます。そうしてはじめて、本テキストの意義も論理の有り難みも納得できるものです。
 たぶん立ち読みでしょうから、パラパラーとめくってみたのでしょうね。しかし、本書は1ページから、一字一句飛ばさずに、腰を落ち着けて読むようにつくってあります。したがって、また機会があれば「まえがき」だけをじっくりと読むことをすすめます。
 そこには、本書の全体像と想定する読者像とが明確に述べてあります。もちろん、学校の履修状況とか、あなたの能力とかによって、よい意味で想定をうらぎってもらうことは可能でしょう。実際にGHSでは高2から学んでいる生徒もいます。ただし、適切な指導者の下で、という条件付きですが……。
 したがって本テキストを,高校2年生の身でもし独力で読むとなると、以下のような条件が必要になるでしょう。
 第一に、読書することが好きであること。すなわち文章を読むことが苦にならないこと。これに対して「理系志望なんで、国語はどうも・・・」というなら、今のうちに様々な方面の読書をすることが結局は早道でしょう。この時期に、こんな時間をもたなかった純・理系の浪人生達は、さして文字量もない本テキストさえ読み通すことができないで立ち往生するので・・・。

 他方、文系の大学生とか、再受験生が本テキストをさっさと読み通して、実によい感想を送ってきてくれたりするのをみると、理系にはやはり国語力が必要なことが痛感されます。
 第二には、「精神的に大人びていること」でしょう。例えば「論理」とか、「本質」という言葉に心の琴線をゆすられるような感覚、目に見える雑多なものよりもその奥にある真実に憧れるような価値観、そういうものに目覚めていくのが成長期の若者のが大人になりつつある一つの在り方です。そういう高校二年生(かつては当たり前だったとは思いますが)ならば、本テキストを読みこなして、さらに精神的に成長していくことができるでしょう。

収録にあたって一部改変


著者後記 : どこかで何度か述べたように、本テキストの「まえがき」は、他の類書や教科書とはちがって「飾り」ではありません。本テキストの学びのスタートにおいてとても重要なことを述べているので、読者諸君は繰り返し味読するように改めて注意しておきます。
 まずは、対象となる読者像について明確に規定していますので、上のファイルでは、その部分を今回改めて編集し強調しておきました。その他には、本テキストでいう「体系」とは何かが、エッセンス的に規定してあります。その具体化が本書の中身です。このような構成の書物は希少ですから、読み方自体をも学ばねばならないのです。
 ですから、その体系の尖端である「まえがき」を軽く読み流すなどしては、もう最初から体系的な思考訓練につまずいていることになります。ご用心!   2009.12 記

No.3 「化学計算つまり理論だけで有機や無機が抜けているのにどうして体系なんですか?」(2008年2月 市販開始以前)

■Answer

 端的には、実物の中身を全部読んでから判断してもらえばよいことなのですが、この質問も前問と同様に不備です。が、これは本人のせいではありません。高等学校の化学が「理論」「無機」「有機」と分かれているのが当たり前である、という前提がこの人にはあるようです。しかしこれは文科省指導要領の現行の線引きにすぎません。それを「不変の真理」であるかのように思い込んではいけません。こんな線引きは、私の高校時代にはなかったし、化学Iと化学IIとの境界線もまったくちがっていて、「ゆとり」とかなんとかのせいもあって、多くの化学計算が化学IIに追いやられているのが現状です。
 少なくとも、この質問は、指導要領に準拠する意図のない本書にとっては無意味・無縁です。これからも、教育的というよりは、制度的な理由で指導要領は5年ごとにコロコロと様変わりしていくことでしょう。本テキストは、そんな本質的でないことにつき合わなくてよい構成にしてあります。「理論」という束縛から自由になって本テキストと取り組めば、すべてがそこにあることがわかるはずです。
 また、当然ながら「体系」ということが全く分かっていません。(もちろん、これも本人のせいではない。)「知識的をくまなく集めたもの」を「体系」と呼ぶべきではありません。そういうのは「辞典」と名乗るか、「大系」と書くべきでしょう。それは文字通り「参考書」=時々必要に応じて調べる書としてはいいでしょうが、基本書として、繰り返し読み込んで身につけるべきテキストにはなりえません。「体系」とは論理的な体系ということですが、そんなことはそもそも教えられていないでしょう。本テキストはそういうことをも学べるように書かれています。


体系化学・もくじ.pdf (クリックして拡大)

体系化学・目次.pdf



著者後記 : すでに第二版となり、こんな的外れな質問も、少なくとも読者からは来なくなりましたが,権威ある教科書の分類は相変わらずですし、その指導要領に準拠する学参の方が圧倒的に多いだけに、「理論」「無機」「有機」という分類に何の疑問も抱かない(べつにそれでもいいんですが)受験生が再生産されつづけていることは2009年現在もたしかでしょう。上の目次をしっかりとながめてもらえばわかるように、高校化学全体が、ただ一つの筋で貫かれています。そのなかに、いわゆる「無機」の定性的知識の基礎になるものが適宜説かれています。GHSで、いわゆる「無機」の問題を演習する段になって、「なるほど「無機」というのはないんだな、単なる個別的かつ総合分野なのだなー」とようやくにわかるものです。2009.12 記

No.2 「英文解釈、現代国語ときて、英語の(3)かと思いきや、なぜ次が化学なんですか?(2008.2月市販開始以前)

■Answer

 受験界の歴史ある名著『思考訓練としての英文解釈』に学んだ、30有余年に渡る、実に幅広い層の、多く読者・ファンにとって、予告された英語シリーズの(3)を、年来心待ちにして来た方にしてみれば、ごく自然な当然の疑問だと思います。
 しかしながら、本書成立にあたっては、他科との関連もありませんし、多田先生と著者・GHSとの接点は全くないので、著者としては答える術がありません。英語に関しては出版社に問い合わせていただくしかありません。
 それゆえシリーズとしてのつながりなどはありません。そもそも、これを企画した当時の「オリオン社」がすでに存在しないからです。育文社はその版権を譲り受けて復刊したのですから、そこに何らかの理由を求めることはできないのです。
 しかし、このようなお問い合わせに広く答える意味もこめて、初版同梱の「成立の経緯とGHS」小冊子の企画がなされました。本HPではそれをweb用に採録したページがあります。ご参照ください。

思考訓練の場シリーズ

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著者後記 : たしかに、『思考訓練の場としての英文解釈(1)』の「第13刷(増刷)に寄せて」には、平成四年の時点で「第3集を執筆中」とありますから,待ち続けている方も少なくないのでしょう。育文社の山田社長からは、多田先生の話を漏れ承ることもありはしますが、その後どうなんでしょう、そういう情報はさすがに伝わってきませんね。あしからず。2009.12 記

No.1 「8つの化学反応式だけで本当にすべての化学計算問題が解けるのですか?」(2008.2月市販開始以前)

■Answer

 もちろんそんなことはありえません。化学反応式は、反応の数だけあるに決まっています。実物を見もしないでの質問ですから、読み違えるのはムリもないですが、育文社の広告をよーく見てみなさい。「化学反応式」や「化学式」ではなくて「化学反応公式」であり、これは本テキストのオリジナル用語です。従来のモノサシで測ることも、理解することもできない、全く新しいメソッドですから、それ相応に真新しい概念が必要となるのです。
 しかし、質問は不備ですね。広告には「本質論としての化学計算原理と8つの化学基礎公式と8つの化学反応公式」とあるはずです。「本質論」という意味がわからないのでしょう。そういう勉強の仕方をしたことがないから、そういうところに関心も注意も行かないのです。化学基礎公式と化学反応公式は、8+8=16ですが、これらは立体的な関係性をもっており、しかも、これらは、本質論からすれば「1つ」です。同じ論理の展開形態にすぎません。といってもほわからないでしょう。これまでに存在しないものですから。他にないからこそ、そして誰も説いてないからこそ、これから出版するのですから。実物を知らないうちには、分からなくて当然です。

育文社の予告広告pdf (クリックして拡大)

思練化学広告HP用.pdf

著者後記 : すでに二年経ち、この広告を改めてみると色々思い出されます。本書の元々の企画はB5版のノートサイズでした。それは、GHSでのテキストがその大きさだったからです。しかし、原稿が完成という段階になって、流通事情や書店の本棚サイズなどの制約から、急遽A5の教科書サイズに変更せざるをえなくなり、ページ数にして50ページ増えてしまいその分、分厚い感じになりました。図版なども大きさを修正しページレイアウトをすべてやり直すなどの作業が加わったため、発売予定が4ヶ月遅れることになったのでした。2009.12 記