POINT1 : 「まえがき」はキチンとよんだかい?
ー飾りではない、ホントウの全体ガイドー
「まえがき」というものは(私もそうでしたが)教科書や参考書では「飾り」というか、どれでも似たり寄ったりというか、そんな印象をもたされてしまっているので、本テキストに対しても同じような態度を取る人がいるものです。
しかし、それとは大きなマチガイです。「まえがき」を軽く読み流すと損をします。大事な結末を迎えられないかもしれません。
「まえがき」は全体のエッセンス
です。少なくとも、『思考訓練化学』においては、その学びの第一歩は「まえがき」を精読・熟読することから始めないと、その先の実りの豊かさが得られないでしょう。
すこし解説しましょう。「まえがき」には、冒頭と結びに、本テキストの想定読者が挙げられています。薬でも、サプリでも、どんな症状の人に効くのかを明示するのは当然です。その対象者として心当たりがあればあるほど、本テキストはまさに‘特効薬’となるでしょう。
次に、もっとも重要な一点、そう、
「体系的とはどういうことか」
が述べられています。
第一歩のあり方が、到達地点の
実りの豊かさを規定する
これこそ、まさに本テキストの核心であり、他とは一線を画す最大の特徴です。「体系的」というコトバを使う人は多くいますが、主観的・ムード的に捉えて使っているものがほとんどあり、本テキストの規定とはまったく異なります。
本テキストでは、何よりもまず「体系的とはなにか」を一般論として提示し、「体系的」の意味を定義してから、本文がはじまります。こんなことは当たり前のことなのですが、そうでない書物にばかり触れてきた受験生諸君には、かえってとっつきにくい感じがすることでしょう。
しかし、諸君らにとって未知の文章展開の仕方なのだからこそ、キチンと読まなければならない!と力説しているわけです。
さらにもう一点、「体系的とは何か」をふまえて、本テキストにおける「思考訓練とは何か」を述べています。どういうことをどういう形で行うことを「思考訓練」と呼ぶのかが端的に明示されています。しかし、コトバそのものを知っても、わかったことにはなりません。
これらの意味は、本テキスト全体を学び終えた後ではじめてわかることですから。したがって、本テキストを学び終えた時にふたたび「まえがき」にもどることが結語で指示されていますが、そのときに、はじめて読んだ時の「まえがき」の理解の程度と、一通り学び終えた後で読んだ「まえがき」の理解の深度とをくらべてみて、自分の進化に驚く!ことになります。
そのためにも、今、出発点にあたって、未だ「体系とは」を何一つわかっていないアタマでも、精一杯わかろうとして努力して「まえがき」を真剣に読んでおく必要があるのです。
POINT2 : まずは、全体を読み切ることを最優先せよ
ー「東京名所巡り はとバスツアー」のようにー
まずは進度の目安から。6月第2週のGHS 第1回実力テストの前までで、1st Stageと[補]が修了しました。これは、サブテキストである傍用問題集「セメント&ドリル」を含めて演習が終わったということです。つまり、どんなにじっくりとやったとしても、4月からの約二ヶ月で「体系化学演習」第7回までと[補]まで進めておくべきです。
しかし、それとは独立に、あるいはそれに先立って実行してほしいのは、演習問題はとりあえず飛ばしてテキストをとにかく最後まで読み通すことです。
「全体が真理である」
との至言は、ここでもまた真なり、です。
それは、あたかも初めて日本にきたガイジンさんが、はとバスにのって東京一周ツアーをするようなもので、
読者受験生にとって、たしかに化学は初めてではありませんが、「体系化学」は初めてのはずです。こんな代物にいまだかつて出会ったことはないはずです。だから、最初の心構えとしては「見知らぬ土地にやってきた」と思わねばなりません。
そのときは、ザッーとでも、たとえ観光スポット一つ一つの滞在時間は短くてもいいから、全体を一周巡ることが、結局は早道となります。自分の頭の中に全体地図を持つことが肝要です。その全体像をもって、今度は一つ一つ時間をかけて、じっくりと演習問題をこなしていくことをおすすめします。
これが飛行機の一部だとわかるのは、
その全体像を知っているからである
POINT3 : 算数に時間を取られるな!
ー化学と算数の区別 テキストp.22【補足2】参照ー
各所で説いているように(たとえばテキストp.24)、体系化学演習は「化学計算式」そのものが答え である、という価値観の転換がまずもって必要です。演習の目的は、基礎公式の形と適用のしかたの訓練ですから、正しい化学計算式が立てられたら十分です。その後の算数計算は、‘化学’の勉強としては必要ありません。化学でなくて「算数」なのですから。時間の無駄です。○や×は化学計算式に対してつけるものであり、けっして答の数値ではないのです。
だから、「数値が答えである」というこれまでの化学計算の常識を棚上げして、算数の筆算や割り算などはカットして、化学計算式ができたらOKとし、次から次へと進んでよいのです。
たしかに、入試では答えを出す計算力や計算のスピードが必要ですが、それも「化学計算式」が確実に立てられる実力がなければ、何の意味もありません。
最初の学びでは、とにかく化学の勉強に集中するために、原則として算数・数値計算はしないこと、そしてなるべく早く、演習の最後までやり切ることが大切な学び方です。
算数計算は、すでに小学校からずっとやっていることであるし、化学計算式を立てる実力がつくと、立式に迷うロスタイムがなくなりますから、入試の実戦的なトレーニングにはいったときに、それこそ正確に慎重に、しかし迅速にやるようにすればよいだけです。順序をまちがえてはいけません。
POINT1 : やり通すためには、先の様子もある程度は知っている方がよいものだ
ー先取りが今をアシストするー
GHSの授業では、6月第2週までの約2ヶ月150分×8回で、1st Stageと[補]までが修了といいましたが、実はちょっとフライングしています。
有機化学の授業も一学期に同時にスタートしています。その進度を見計らいつつ、5月末には2nd Stage 化学反応公式 No.6 「有機物の燃焼反応と分子量・分子式」の章をやりました。
有機化学に合わせてという理由もあるのですが、それだけでなく、 この章は化学反応公式と《化学計算原理》との関連をイメージするには最適のパート だからです。
まず、「有機物を完全燃焼させて二酸化炭素と水を定量したデータと分子量とから分子式を求める」という問題は、多くの人がすでになじみがあるからです。そう、C:H:O=……とするヤツ。
ところが、そんな旧式のやり方ではダメだ!! 発展性がない!やめてしまえ! というダイタンかつカゲキな主張ですから、固まった脳細胞には、なかなかインパクトがあります。 従来の教科書的なやり方の完全否定 なのですから。
そらに、無機だろうと有機だろうと、化学の計算はすべて《化学計算原理》で筋を通して、まったく同じようにやる!! という本テキストのコンセプトがとても明確な章だからです。
それを通して、 化学反応公式と基礎公式の関係 も見えてきます。そして、これと同じようなことを学ぶのが2nd Stageなんだな、という感触と見通しとをもって次の段階へと進んでもらうためです。
こうしても構わない、というよりは、こうした方がよいだろう、というアドバイスです。
ゴールがあることが確かなら
今を頑張れるのが人間である
POINT2 : 早々に結末!を知る
ー「最終公式」の意味ー
実は、もう一つ、早めに目を通しておいた方がいい章があります。それは、化学反応公式No.8 「有機・無機反応一般と予想量・実際量」です。
「なんだ! それは最終章ではないか?ドラマでありストーリーであるといっていたのに、その結末をいきなり見ろとは、なんと味気ない……」と思う人は、まあ、あえて見なくてもかまいません。
しかし、この章はタイトルからも察してほしいのですが、「化学反応一般」に対する公式なのです。ようするに、 どんな化学反応に対しても使えるまさに「最終兵器」 なのです。
「だったら、他の化学反応公式はいらないではないか?」「最初の話と 矛盾している!? 」等々の疑問については、すべてテキストですでに解答してあります。それも含めて読んでください。
何より、《化学計算原理》が収束すること 、つまり この登り道には終わりがあり、山頂=ゴールがある ことを知ることは、登り始めてまもない人にとっては希望を与えてくれる、有り難い情報のはずです。
今は昔、昔は今、化学学習のゴールがどこかではなく、そもそもゴールがあるかどうかさえあやふやなままに化学の学習へと漕ぎ出したはいいが、やがて多くは遭難してしまうという有様だったのですから、その目的地を知ること自体でもう、十分に画期的なのです。
POINT3 : 高校生なら『体系化学』の順番通りに学ばなくても大丈夫
ー体系的に学ぶ時間ためのはたっぷりあるー
昨今の文科省検定済みの化学の教科書は、センター試験を易しくするために、定量化学の部分を化学IIに押しやる傾向がアリアリとしてますから、化学基礎と称する、実態は“化学雑学歴史よもやま話”でしかないものを学んだにすぎない高校2年生にとっては、『体系化学』はとてつもなく難しく映るのではなないかと思います。
そんな現役高校生は、基礎公式をこの順番ではなくて、学校の授業ででてきた順に、テキストを読んで、演習をして・・・・・・という風に学んでいっても構いません。『体系化学』にはすべて同じ筋がとおしてありますから、そのように学んでから、2周目でテキストの通りを学べば、体系的な思考訓練はできるのりです。はじめて山に登るのですから、そういう“ハンディ”を利用しても大丈夫です。
そこかしこで説いているように、本当の学びは、2周目以降です。浪人生は曲がりなりにも化学全体を虫食い状態ながら学んできたから、1周目はテキスト通りに学べ!と述べているのであり、これから化学をはじめて学ぶ高校生には厳格に当てはめる必要はありません。
たとえ、高校生諸君が、『体系化学』を順序どおりに学ばなかったとしても、部分部分の学びは、学校の教科書で学ぶよりも何段も深く、将来性に富んだものになるはずです。
ゴールがあることが確かなら
今を頑張れるのが人間である
POINT4 : 高校生的1st Stageのアルキカタ
ー基礎公式No.3'についてー
高校生諸君が、体系化学の基礎公式をスイスイと学んできて、最初にぶつかるのは、化学基礎公式No.3' 「気体の状態量とmolの一般式」でしょう。
ここの書き方は、明らかに、一度学び損ねた高卒生向けに、ホントはこういう意味があったんだ!こんな事も理解せずに単に式を暗記して当てはめることしかしなかったからわかった気がしないんだ!という実感をもってもらいたい、と願って書いた章です。
したがって、高校生諸君には、以下のような順に学んでもらうとよいでしょう。まず、p.30のイントロを読んだら、「1.・・・RTの化学的意味とは」を飛ばして、ワープして、p.40の4.に進みます。ここは、PV=nRTという気体の状態方程式がどのように導かれてきたか、という話であり、これは教科書にも載っている説明をよりわかりやすく述べたものです。
それがわかってから、1.2.3の、基礎公式の各々のパーツの意味を理解する、という順番でよいかと思います。1.2.3は類書にはない、本テキストのオリジナルな説明ですから、式への疑問とか問題意識とかがあらかじめないと、難しく感じるものなのです。
POINT1 : 化学とは何かと《化学計算原理》のスキマ
ーこれもまた体系的であるということー
全体へのイントロの章においては、まずは「化学とはなにか」を述べていますね。それを物理との対比において際立たせてあります。
「物質から物質への変化」の論理の探求とその理論家が化学の主眼です。この物質から物質への運動を「化学変化」と呼ぶのですが、体系的に説くとすれば、次には「化学変化とは何か」を説いてから、《化学計算原理》に行くのが順序です。
しかし、本書は学術書ではなく、受験参考書・テキストであり、受験生読者諸君の思考訓練こそが最大のウリですから、ここは敢えて伏せておいたのですし、たださえ化学の論理については空っぽの受験生に対して、次々と一般的規定を述べるのは、少なくとも教育的には益なしとの判断があるのです。
なぜならば、GHS生も読者も、何周もテキストとして繰り返すのが前提としてありますから、繰り返すほどに,論理とはがわかってきて、論理を抽象するということが自分でできてくるものです。ならば、「化学反応とは何か」くらいは、具体的記述の中から、自ら抽象してもらうことも、大切かつ有効な思考訓練の一環となるはずです。
・・・・・もっともそれについては十分なる時ほ経たこともあり、『医大受験』の連載において、「答え」を出しておきました。上の宿題をやってから、そちらを参照してもらうのがベストです。
体系的ということは論理の
階層に飛躍がないこと
POINT2 : 有機化学の学習との連繋について
ー有機化学は「体系化学」のその先にあるー
「体系化学」テキストは、有機化学の知識レベルの記述を含みません。有機化学の学びは、体系化学の学びをふまえてやることが必要です。なぜなら、独立な「有機化学」などはあり得ないのであり、化学の一分野が「有機化学」だからです。あたりまえのことですが、一般と特殊の関係を理解しない指導者にかかると、「有機化学は独特の分野だ」、「無機と有機はちがう」、あげくの果ては「有機は暗記科目」なんていわれてごまかされてしまいます。
もし化学一般の学びが、有機化学に通用しない、つながっていないとすれば、それは化学一般の学び方がダメだというにすぎないのに、それを有機化学自身のせいにしているにすぎません。これを一般社会では「責任転嫁」といいます。
『体系化学』テキストの学びは、有機化学の学びにつながっていきます。そのうち、定量化学の部分のみを取り上げて体系に組み込んだ形で説いています。
その第1が、化学反応公式No.6であり、分子式を整数解として求める解き方です。これは有機化学計算の第一歩というより、有機化学入試問題を解く為の第一歩であり、ここでまちがうとその先は0点ですから確実性がなによりも大切です。だから、手元の問題集でも分子式を求める部分だけとりだして、素早く正確にできるかを練習しておく必要があります。
そして、Chap2-1でも触れたように、化学反応公式No.8によって、それ以外の有機化学の入試問題はすべて解けるので、この2つが、有機化学への扉となります。
体系化学「有機化学篇」(『医大受験』で順次公開)においては、特に化学反応公式No.8の具体的な場面場面での使い方に習熟していく練習を行います。