『思考訓練化学』の成立とGHSという場

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《『思考訓練化学』の出版決定へ》

  • 育文: 先生方の経歴などから想像して、世間的に常識的に凡人が解釈することが、よい意味でことごとく裏切られハッと気づかされるお答えばかりが返ってきますね。(笑)
  •  その意味では弊社にとっても、また将来読者になられる方にとっても、直接にお話を伺うというこの企画の意義を確認できたと存じます。
  •  それでは『思考訓練化学』のルーツが判明したところで、先ほどの話に戻りましょう。GHSとして出版が決定したというところまででした。
  • 村田: そう、いよいよGHSとして『体系化学』の出版を決意した。問題は、どこの出版社から出版するか、です。私は、そういう方面の知識や交流がありませんから、GHSの最大の理解者であり、その世界に明るい山田社長に相談を持ちかけたのです。「どこか出版社を紹介してくれませんか?」と。
  • 山田: そうです。そのとき私は「出版社を紹介するのは良いですが」……,「どうして、うち(育文社)をとばすんですか?」と申し上げた。
  • 村田: そこで一瞬、間があって、その後二人で大笑いしましたね。はじめ私は、狐につままれたような気でしたが、社長がにこりとするのを見て大笑いになったのでした。先ほど社長がおっしゃっていたように、GHSは育文社とは広告関係でのお付き合いですし、学参を出していくというお考えはつゆほどもないものと感じていましたので出版するに当たり「育文社から」という発想は私にはハナからなかったんですね。
  • 山田: 無理もありません。実際、私は受験参考書を出していこうとは思っていませんでしたし今も思っていないんです。とにかく受験参考書は大衆受けするようなものでないかぎり採算が取れません。育文社も学参を出している出版社であるとはいえ、私の心情として、あるいは大げさかもしれませんが信条としても「売れればよい」というような参考書を出すつもりは毛頭ないわけです。
  • 村田: そこが、社長の魅力ですし、共感できる点です。
  • 山田: 恐縮です。私はそんな偉い人間ではありませんけれど、村田先生から出版の話があったときに、何か、すうっと入ってくるものがあったのです。
  •  もともと村田先生には一目置いていましたし、天野先生ともすでに何回かお会いしていましたから、こういう優秀な方々に日本の教育において活躍してもらいたいという思いが常々ありました。そこに村田先生から天野先生の参考書を出したいというお話が出て、何のためらいもなく「是非うちで・・・」と自然に出てきたのだと思います。そのとき同時に『思考訓練・・・』シリーズでとの発想も浮かんで いました。それまでは、考えたこともなかったのですけれども・・・。
  • 村田: とにかく良いものを、という考えが私にも、山田社長にも常々ある。それが『思考訓練の場としての英文解釈』という名著を縁に結びついたということですね。そこに拝金主義が入る余地は全くない。
  • 山田: そのとおり。育文社の方針として、今回の本を書店営業をしたり、新聞広告を出したり等の宣伝・販促活動をする意図はないので、いわゆる「注文販売」になる。印税収入も当面は期待できない旨もお伝えしました。そうした現実的な内容をお話ししても両先生とも平然と、いやむしろニコニコされていた。
  • 天野: 村田先生がすかさずおっしゃいましたよ。「本物が世の中に出ることこそが最も大事なんだ 」と。そして、さらに、
  •  「実際、GHSで一年間授業を聞ける生徒はせいぜい20名程です。でも全国には自分が求める道を示してくれる指導者に恵まれず、また仮にGHSの存在を知り得ても、様々な事情で上京できない若者もいるのだ」とも。
  •  近年、全国各地からやってくる生徒の比重が大きくなっています。地方代表としての彼等の生の声、悲痛とさえ言える訴えに、せめて出版という形を通してでも……と心動かされたというも事実です。私自身が過去にもった境遇として、それはわかりすぎるほどわかる。そういう若者の手に届くことが本望ですよ。
  • 育文: 世の中の常識では、本を出版する=印税がガッポリ入る、出版の目的=金儲けという図式・風潮ができあがっていると思います。今回出版決定を受けて、編集担当からも念のため(失礼ながら)著者宛に「恐縮ながら、小社では当面の印税は期待できませんが・・・」と申し上げたところ、今とまったく同じお答えでした
  • 天野: その時点では、私の‘本業’の方をご存知なくて心配いただいたのだ、と思います。‘本職’とは別に生活基盤がありますから、「印税収入はなくても一向に構いません」ともお伝えしました。
  •  さらに(本当は長い手紙なんですが)商業主義に迎合も妥協もすることなしに、参考書としてあるべき姿を追究するには、むしろ育文社の方針が最適であること、そして、『思考訓練の場としての・・・』という歴史と伝統のあるシリーズに加えていただけるのは、こちらの「思い入れ」からすれば願ったり叶ったりであると。 
  •  それに、思考訓練シリーズなら、略して「思考訓練化学」でしょう。昨今はやりの「天野の化学」みたいな呼び方をされなくて済みますしね。長くなるから理由はカットしますが、そんな呼ばれ方は私個人としては嫌いなんですよ。  
  •  さらに、シリーズの中にまだ化学がないのがいい。大抵の学参出版社にはすでに何かありますから、実質的にそれを粉砕することになりますから、失礼ですしね。 そんな余りあるプラス要素があるのですから、印税云々という要素は、ずっと後方に控えてまして・・・と。勿論、売れて育文社が潤うのは拒みませんけどね(笑)
  • 村田:出版には当然費用が発生するし、採算がとれるかは未定でしょう。山田社長もそれを承知で出版を決断された。つまり、三人とも今回の出版に関して数字的なものは何も見ていないわけです。利害・利益の問題ではなくて、とにかくよいものを出したいという一点で、すなわち ‘人生、意気に感ず’ との思いで三者が結びついた。それを取り持つことになったのが、ほかならぬ多田先生の名著『思考訓練の場としての英文解釈』だということですね。
  •  運命論者的なレトリックを使えば、まさに「不思議な縁」です。
  • 山田:本当です。それ以外ありません。何しろ、私は天野先生の著書の内容に関しては何も分からないんです。しかし、何も心配もしていないんです。そういうことです。              《了》 






























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「大いなる希望の学び舎」
に集いし若者たちは
頭そのものを良くして
学問の場へと巣だって行く

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