『思考訓練化学』の成立とGHSという場

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《GHS体系化学のコンセプトとルーツを語る》

  • 育文: いよいよ出版が決定となったわけですね。その先の展開へと進む前にちょっと、今お話に出てきた「大感激を呼ぶGHS化学」の中身ですが、いったいどこがどう違うのか知りたくなりました。
  •  『思考訓練の場としての体系化学』の成立経緯には出版することそれ自体にまつわる経緯という面と、内容的なルーツから手繰っていくという面とがあると思います。せっかくご本人と同席させていただいていますので天野先生ご自身から、この点についてお話願えませんでしょうか。
  • 天野: はい、予備校ですから、ほんの一年足らずの生徒との付き合いですが、人生を左右するともいえる時間をともに過ごして、生徒からそう思ってもらえること、そしてGHSという場で、そんな‘教育者’でいられることを嬉しく思います。
  •  確かに私は‘医師’という「本業」があります。平日は病院に内科医師として勤務し、外来、病棟、健診、訪問診療、予防接種……等々地域医療の一翼(まあ一応)を担っています。だから、肩書きだけ「医師」でも,実際は患者は診ていないとか、ごくたまに・・・というような方々とは別物です。
  •  そしてまた、広告のプロフィールにも紹介していただいたように、GHS講師としての‘教育者’の顔は「本職」です。
  •  誤解する人もいるかもしれないので付け足しておきますが、私にとってGHSは、趣味や暇つぶし類いでもないし、収入目的の副業でもない。稼ぎたければ医師のバイトの方がよいでしょう。
  •  人生の岐路に立つ真剣な受験生が、趣味レベルで教壇に立つ人間に感激しますか?かといって、その逆に医師稼業も片手間にやっているわけでもないし、できるわけがない。どちらも、その人の人生にかかわるのですから。だからどちらも「本気」ですし、精神的ウェートは等価です。
  •  それは授業を受けた生徒には伝わりますよね。生徒が感激してくれるということの根底にはこういう「本気」があることをまずお伝えしたい。それは本書を通してもきっと伝わるでしょう。
  • 育文: なるほど、てっきり体系化学の内容からお話されるのかと思っておりました。「感激」の根底には、人対人、精神対精神との直接的な「本気」の交流がある。そういう教育の場としての原点をまず問わなければいけなかったのですね。
  •  効率・商業主義的発想なら、同じ内容の授業なんだからサテライト放送で全国に配信すればよい、DVDに録画して見せればよい・・・という方向に流れていく。しかし、そうはなりませんね、本物の・本来の教育の場であれば。
  • 天野:その通りに‘真剣な精神的な交流’である教育の場で創り上げられた-------というのが本書の「ルーツ」なのです。育文社の方はよくGHSでお見かけするのでご承知でしょうが、GHSは総数少人数制予備校です。
  •  「少人数のクラス」ではなく、全体の生徒数が少人数なのです。昼間部生(浪人)は毎年20数名に達すると募集を締め切ってしまいます。
  •  それは生徒一人一人を把握し、各人の現状と希望と真摯に対応するための教育方針として(経営方針としてではなく)割り出された総人数です。
  •  化学は選択者が多く人数の多い方ですが、でも現役と合わせて20数名です。すぐに名前と顔を覚えるだけでなく学力や‘キャラ’も程なく全員把握できますね。 
  •  その人間性・学力に合わせて、結局全員を相手に質疑応答等のやりとりが毎回行われます。板書のコピーマシンで済むなんてことはないのです。逃げも隠れもできませんから、やがて自分から疑問を発信し始めます。また、こちらから質問し返事を聞けば、頭の中身も知れてきます。こんなことからわかってないのか、こんなふうに誤解するのか、そんな発見をさせてくれる教育の場にいるのです。  
  •  取り巻きの顔しか覚えない大手予備校の講師とは環境そのものが違うのですし、ノートを黙々ととるだけの生徒たちとは、世界そのものが違うのです。 
  •  そういう双方向的コミュニケーションのなかで、生徒が躓く箇所、疑問さえ抱かない箇所、できる生徒の疑問とできない生徒の疑問のちがい・・・・・等々が化学のあらゆる所で浮かび上がり、それを10年余にわたって積み重ねたのが、『思考訓練の場としての体系化学』の原型のテキストなのです。
  • 育文 : そしてそこには天野先生が東大の理3を受験された時に作られた秘蔵のノートの内容やマル秘のテクニックなどがちりばめられている!というわけですかね?
  • 天野: あ、いや、それはちがうんですよ。確かに東大理三は‘最強の受験生’の集うところですし、現実に、理3・医学部卒生がそんなふうに書いた参考書類もいくつかあるようですから、そうにお考えになるのもムリないことですが、実はそうではないんです。
  •  たしかに、東大医学部の再受験の折に、並みいる私立進学校の大秀才達と競争し勝ち抜くために、どの科目も受験の頂点を極めるべく刻苦勉励したのは事実です。不得意科目の一つも許されませんから万遍なく上を上をと目指してやり尽くした・・・そのたるに代ゼミや駿台で「師」を求めた。その知識のおかげで化学に限らず指導できている面はありますが、その知識は必要条件にすぎません。
  • そんな受験知識がいくらあっても体系化学のルーツにはなりえません。本書のような化学計算の体系的理解は受験生の私には皆無でした。
  •  そんな理解力・実力は、今思えば欲しかったけれど受験のときは体系を説く指導者も指導書もなかった。だから、「体系」という意味も知らず、イメージもなかったのです。
  •  「体系」ということに開眼したのは医学を学び、同時に教養として哲学と諸科学を偏りなく学ぶという時間と場所をもてたからであり、そGHSで理科の教育に  関わる、という機会を与えられたことに『思考訓練化学』の真のルーツがあります。
  •  受験で詰め込んだ、高級だが雑多な知識や、個別的・単発的テクニック類では、自分で問題は解けても、他人に同じように解かせてやることはできません。(有名私立の秀才を除いて)  
  •  だから、自分の受験経験を相対化、もっといえば否定することからはじまり、それを体系という観点から、受験化学を再構築する過程が、GHSでの10年余にわたる実践であったということなのです。つまり東大合格時と論理的な断絶があるのです。ちなみに、理三に合格した時より今の方が学力は数段上ですね。教えることで学び、私自身も体系的理解が毎年深まり、頭を良くしてもらっています・・・。「あんな頭でよくうかったなぁ」と思うことさえある今日此頃です。(笑)
  • 村田: GHSでは選抜試験や指定校制などはないので、いわゆる有名私立出身者もいますが、そうでない普通の高校、地方の県立高校の生徒などもいて多種多様です。
  •  今の天野先生の話からわかってほしいのですが、そんな幅をもった生徒達に感激をもって受け入れられるには、単なる「東大合格」経験だけではムリなのです。『思考訓練化学』がかなり広い射程をもつ所以はここに在りというわけです。

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GHSは‘総数’少人数制予備校
少人数クラス授業がふつうだが
共通科目の化学は例年、
教室定員一杯の20数名の
真剣さと熱気とで満ちている
































ドイツ哲学.tiff
ドイツ観念論哲学を代表する哲学者
カント、フィヒテ、シェリング、ヘーゲル

  • 物事の体系性に着目し、その論理を追究してきた歴史が哲学の歴史であり、それが最も高度な域に達したのが19世紀のドイツにおいてでした。これに対して,歴史的には英語圏においてはこのような体系性を持った学問は花開く事がありませんでした。そうした「体系性の象徴」であるドイツ哲学に対しての歴史的敬意を表する意味から、GHSは英語ではなくドイツ語のイニシャルにしているのです。(GHS HP Q&Aコーナー Q2.「GHSはどうして英語ではなくドイツ語なんですか?」より)







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東大医学部図書館の広場に佇む
初代医学部教授ベルツとスクリバの銅像
いすれもドイツから招聘された